新たな時代の企業立地 山口県

「産業維新」を政策テーマに掲げ、企業誘致に積極的に取り組む山口県の村岡嗣政知事。平成26年の就任以来180件の企業を呼び寄せた山口県の魅力とは何か。東京大学大学院教授で経済学者の柳川範之氏との対談を通じて、山口県の産業政策の検証を行った。

本文はオンラインで実施された対談を再構成したものです

EPISODE 1

《産業振興で地域の活性化を目指す山口県》

―まずは山口県の紹介を

村岡山口県は、本州の最西端で三方が海に開かれているため海の幸が豊富です。よく知られたふぐだけでなくアンコウやアマダイも水揚げ量が日本一。また「獺祭」をはじめ地酒も国内外で高い評価を得ています。観光地としては「角島大橋」や「元乃隅神社」が近年では注目を集めています。

柳川昨年から山口県の金融機関の社外取締役になりました。確かに食べ物やお酒は印象が強いですね。観光資源も豊富で、特に瀬戸内の豊かな自然はこれから世界に誇れる観光地として期待できるのではないかと思っています。また幕末維新期には多くの人材を輩出するなど歴史の重みや土地の力強さを感じます。

―県政にかける思いを聞かせてください

村岡2018年に総合計画「やまぐち維新プラン」を策定しました。人口減少に歯止めをかけ、誰もがはつらつと暮らせる「活力みなぎる山口県」の実現を基本目標としています。その実現に向けて、活力の源となる産業力を伸ばす「産業維新」、観光力を強化し交流を加速するための「大交流維新」、安心して暮らし続けられる基盤を築く「生活維新」の「3つの維新」に取り組んでいます。

柳川人口が減っていく地方都市の環境はネガティブな話になりがちですが、実はそこに大きなチャンスがあります。そのチャンスをつかむために知事が果たす役割は大きい。「山口県をどうしたいか」という強い思いが県を動かしていく原動力です。今、山口県は知事のリーダーシップの下、産業をどう育てていくかを政策の柱に取り組んでいます。村岡知事から伝わってくる熱い思いが県を動かしていく力になっていると思います。

村岡嗣政知事

「3つの維新」で活力あふれる山口に

―「産業維新」の内容とその成果は

村岡「産業維新」は、「3つの維新」の中でも重要で、地域の活力の源となる産業力を強化し、県の強みを活かした戦略的な企業誘致や、医療・環境・エネルギー分野など、成長分野に狙いを定めたイノベーションの推進のほか、産業人材の育成・確保などに取り組むものです。企業集積や雇用創出を通じ、最終的には県政の最重要課題である人口減少問題の克服に繋げていきたいと考えています。計画を策定した平成30年から令和2年までの3年間で、78件の企業誘致を実現。平成26年2月に私が就任してからは180件の企業に山口県に進出いただいています。

柳川県を豊かにするには産業の活性化が必要、そのためには企業誘致が重要です。外から良い企業が集まると、それに呼応する形で県内からも新しい企業が生まれてくる。相乗効果で経済が活性化して回っていく。産業活性化を重視した山口県の狙いは正しいと思います。また誘致活動を活発化するためには個々の誘致策だけでなく、企業が育つ基盤をその土地が持っているかが重要です。その点、山口県は明治維新の頃から優秀な人材を育んで来た伝統がある。その基盤が企業を作ろう、工場を作ろうという原動力になっているのでしょう。

柳川 範之氏

「企業が企業を呼ぶ。好循環が生まれる」

―産業振興の歴史や現在の主要産業を教えてください

村岡 実は「山口県は日本一の工業県」です。長年にわたる産業の集積と、企業間同士の連携が図られた結果、製造業に該当する第2次産業の割合が全国の大都市圏に比べ10%以上も高く、「一事業所あたりの製造品出荷額」はトップなのです。
歴史的には江戸時代から長州藩の「米」、「紙」、「塩」の「防長三白」という殖産政策で、古くからものづくりを中心とした国づくりをしてきました。明治時代には、セメント製造や器械製糸の工場が設立され近代工業が芽生えはじめ、大正期から昭和初期にかけて瀬戸内海沿岸地域に、造船、化学、機械、金属等の工場が次々に立地しました。
戦後は大規模な港湾施設や石油化学コンビナートなどの工場群が形成され、基礎素材型産業が発達するとともに鉄道や自動車など輸送用機械産業も進出。近年では大手医療関連企業の進出で医療関連産業の集積が進み、原薬の出荷額は全国1位を誇っています。

山口県は日本一の工業県

EPISODE 2

《企業進出が進む山口県の企業立地メリット》

―なぜ山口県には多くの企業が集まるのでしょう

事業メリット1「良好な交通アクセス」

村岡山口県の企業立地のメリットとしては大きく5つ挙げられます。山口県は本州最西端でアジアに近く、中国・四国・九州地方の中心に位置する優れた地理的特性を有しています。港湾施設は、下関港と徳山下松港の2つの国際拠点港湾と、岩国港、三田尻中関港、宇部港、小野田港の4つの重要港湾があります。陸路では中国自動車道、山陽自動車道、そして整備中の山陰道の3本の高速道路と、それにつながる幹線道路が、充実したネットワークを形成しています。山口宇部空港と岩国錦帯橋空港の2つの空港があり、羽田空港から約90分と首都圏へのアクセスに優れています。新幹線の駅も5駅あり、鉄道での移動も便利です。

事業メリット2「災害リスクの少ない環境」

村岡山口県は観測記録が残る大正8年以来、震度6弱以上の地震は一度も発生していません。震度1以上の発生回数も全国3番目の少なさです。令和元年に日本経済新聞が発表した「工業団地浸水リスク調査」でも安全性を示せました。自然災害に強い、という点は山口県の大きなメリットです。

事業メリット3「日本一の給水能力を持つ工業用水」

村岡工業用水は「産業の血液」とも言われ、企業の生産活動に欠かすことのできない重要な産業インフラの一つです。山口県の工業用水給水能力は日本一であり、きれいで安い水を約80のユーザー様に供給しています。工業用水については給水に必要な引込管の設置について支援する制度や、工業用水の新規受水に伴って受水設備を設置される場合に経費の一部を補助する制度、高レベルな水質を求める企業が新たに浄水設備を設置する場合に費用の一部を補助する制度の3つの支援制度を準備しています。

柳川立地環境の中で、インフラ関連の充実は山口県の強みです。特に工業用水。道路・空港などのインフラは目につきやすいですが、製造業にとって水は重要です。それが豊富というのは強い。

事業メリット4「豊富な産業人材」

村岡人材の教育環境も充実しています。人材面では、技術力を重視する風土から技術系教育機関が充実しています。高校で工業を学ぶ生徒の割合は全国第5位。山口大学をはじめとする4つの国公立の大学や、3つの高等専門学校があるなど、工業系人材が豊富です。高卒者に占める製造業就職者の割合も高く産業の担い手となる優秀な人材が多く育っています。また山口東京理科大学には平成30年4月、県内初となる薬学部が新設され、医薬関連の人材も育成されています。

事業メリット5「日本トップクラスの優遇制度」

村岡本県に進出する企業にはさまざまな優遇制度を準備しています。まず工場等の新設や関連施設の整備等に対する補助制度があります。また県の産業団地を取得する場合には土地代を最大80%補助します。これは全国トップクラスで、補助金適用すると平均単価で平米4千円から事業用地をご利用いただけます。また、IT関連企業やサテライトオフィスの誘致に向け、不動産の賃借や施設改修、通信回線の使用に係る費用の一部を支援する制度を設けています。更に、事務系や研究開発部門などの誘致に向け、県独自の補助制度を設け、企業の本社機能の誘致にも取り組んでいるところです。

  • 良好な交通アクセス

    良好な交通アクセス

    整備された道路網、2つの空港と瀬戸内の港湾設備など陸、海、空ともに優れた交通インフラを備えます。東京よりも韓国に近くアジアビジネスの拠点にも最適。

  • リスク分散の適地

    リスク分散の適地

    地震など自然災害が少ないことも山口県の魅力のひとつ。気候は概して温暖であり、風水害も比較的少なく、全体として住み良い県といわれています。

  • 工業用水の安定供給

    工業用水の安定供給

    豊かな自然による豊富な水資源を背景に日本一の給水能力を持っています。水質も良く、低廉な工業用水で、食品、医薬関連にもご利用可能。様々な補助金制度も用意しています。

  • 豊富な産業人材

    豊富な産業人材

    優れた歴史的風土を持つ山口県は、伝統的に向学の気風に富み、全国的にも知られる教育県。転職率は3.9%と全国で最も低く、入社した企業で長く働く傾向があります。

EPISODE 3

《高まる地方の価値、山口県の戦略とは》

―企業が求める立地環境とは

柳川 企業が立地を決めるポイントとして、自然環境としての地の利、ハード面のインフラ、豊富な人材などがあげられますが、それに加えて重要なのは「集積のメリット」です。企業が企業を呼ぶ。人が人を呼ぶ。企業が集まっていること自体がメリットになるのです。企業同士のコミュニケーションが進み、インフラも整備されやすくなる。人が集うようになると企業も育つようになります。山口県では歴史的な経緯で、企業が集まり産業用のインフラが整備されてきました。こうした環境が次に企業を呼ぶ要因になっています。
集積するのは同じ業種の企業でなくてもよいのです。例えば同じ工業用水というインフラを使うのであれば、別の産業でもよい。積み重ねられたインフラは、その設備を作った従来型の企業だけでなく、新たな企業にも恩恵をもたらします。山口県ではこうした企業が企業を呼ぶ好循環が進んでいます。その事実をまずはアピールして広く知ってもらうべきです。その上でインフラの使い方に工夫を加え、企業に提案すれば新たな産業を呼び寄せやすくなります。

―山口県の将来像について

村岡デジタル化を推進しコロナ禍で生じた様々な社会変革の動きを県政の推進につなげていきたいと考えています。産業や医療、教育等の様々な分野で、社会変革の原動力となるデジタル化を強力に進め、官民を挙げたデジタルトランスフォーメーションを推進し、地域課題の解決や新たなイノベーションの創出を図っていきます。また「働き方の新しいスタイル」に対応し、テレワークを活用した移住、ワーケーションの推進など、新たな人の流れの創出・拡大に取り組んでいきます。またその受け皿ともなる企業の生産拠点やサテライトオフィスなどの誘致にも、取り組んでいきたいと考えています。

柳川コロナを契機とした新しい暮らし方を支えていく取り組みは重要です。会社の所在地に居なくても、生活を重視した場所で仕事をすることも当たり前になりました。企業誘致だけでなく、生活の場としての山口の魅力を高めていくことも必要です。ITやリモートの環境が充実してくると、山口県の暮らしに魅力を感じ、人が住むようになる。人を集めてそこから地域を発展させることが出来る時代になってきているのです。

村岡この時代は山口県にとってはチャンスです。仕事をしながら暮らしも楽しめる環境が山口にはあります。風が向いてきたと感じます。

村岡嗣政知事

「変革の時代、山口県にはチャンス」

―地方都市の可能性について

柳川 今は地方都市にチャンスが訪れている時代です。問題だと言われながら長らく変わらなかった東京一極集中にも変化が生まれてきました。これからは東京からどの地方に行くかで人材の取り合いが始まります。地方都市はまずリモートやワーケーションが出来る環境を整え、その上で各地域の特性を生かしどうやって人材を引き付けていくかを考えるべきです。
山口県には大きな特性があります。ひとつは豊かな自然とそこで生み出される食やお酒。それを伸ばしてここで働きたいという街づくりを進めていく戦略が有効です。もうひとつはここに産業の集積があったということ。単に余暇を過ごすために山口県に来る人ではなく、仕事への意欲をもって、もっと他の人とディスカッションしてみよう、事業してみようという人にとっては、様々な産業が活動しているという点が魅力になります。そういう人が集まると、より大きな産業誘致につながります。人と人、企業と企業が積極的に交流できる方法、山口県に来るといろんな企業と連携できる、人とのネットワークが出来る、そんな方策を考えるべきです。

村岡今、県主導の企業間の協議会などのネットワークを意識的に作っています。そんな中からイノベーションが生まれればと考えています。また立地された企業のアフターフォローも市町と連携し、来てくれた人が良かったと思えるようなサポートをしていきたいと思っています。

―最後に

村岡 山口県は「日本有数の工業県」、「良好な交通アクセス」、「日本一の給水能力を持つ工業用水」、「豊富で優秀な産業人材」など、全国に誇れる強みを有しています。
また、一方では、自然にも恵まれるとともに、食材も豊富であるなど、暮らしやすい生活環境も有しています。こうした、本県の特徴は、変革するこれからの社会・生活のあり方を見据えると、非常に魅力のあるものだと自負しています。立地に向けた検討から立地後のアフターフォローまで、きめ細かな支援により、山口県への立地をサポートしてまいります。是非、山口県での立地についてご検討いただければと思います。

対談の様子
司会 八木ひとみ氏

司会 八木ひとみ氏

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《対談動画アーカイブ》

山口県商工労働部企業立地推進課

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